そんなとき、私の前に何かがスッと差し出された。
「.....月下、美人??」
その白くあでやかな姿に目を奪われる。
「...わたくしに、くださるの..??」
無骨で無愛想な甚兵衛が花をくれるとは思わず、面食らってしまった。
「..来る途中で見つけたもので...
明日には、枯れてしまいますが...」
少し気恥ずかしいのであろうか。横を向いてもごもごと話す甚兵衛。
「いいえ、構いませぬ。嬉しゅうございますよ。...ありがとう甚兵衛。」
じぶんでも顔がパアと明るくなるのが分かった。
きっと、甚兵衛も案じていたのだ。
最近私が悩んでいることを。
明日には枯れてしまうであろうその姿をもう一度目に留め、
私は花を髪に差した。
そうだ、私は甚兵衛のそんなところを知っているから兄のように慕えるのだ。
影でいつもそっと見守ってくれている。
そのなんと心強いことか。
何度も支えられてきたのであった。
