深海家奇譚




気付くと丘に着いたようで、甚兵衛がそっと地面に降ろしてくれる。



「...此処は、いつ来ても美しいな。」



不知火の丘は一年中白い花が咲き乱れている不思議な場所だ。

今日は、満月に照らされて白い花が一段と光って見えた。



丘からは海が一望できる。


海はいつものように穏やかにさざめいている。


しかし、私の心はいくつもの小さな波が波打っていた。




何か最近、嫌な予感がする。



それが何なのかはまだ分からない。

しかし、確実に何かが足音を潜めて近付いてきている、

そんな予感がするのであった。