深海家奇譚



ふと、部屋から外を見れば美しい満月だった。



「何とも美しい月...少し散策してみるかの...」





静かに立ち上がると天井の梁(はり)から甚兵衛か舞い降りてきた。



「....どちらへご所望にござりますか」


低く、ぶっきらぼうにも聞こえる声で甚兵衛が聞く。




「不知火(しらぬい)の丘じゃ。」

「...承知。失礼つかまつりまする。」



そう言うや否や甚兵衛は私を横抱きにして夜を駆けた。