ぴょこん。 気が付くと千手(せんじゅ)が膝の上にいた。 昨日の御勤めの際に拾ってきた子だ。 身体から出ている突起物が千手観音を思い浮かべさせるようだったので勝手に「千手」と名付けてしまった。 「お前も力が戻ったら早く海に帰るのよ。」 寒天が詰まったようなふよふよとした身体を撫でると、嬉しそうに揺れる千手。 前々から、こんなことはよくあった。 普通の魚ではない、奇妙なものたちが時たま海辺に打ち上がるのだ。 この者たちは深き海よりの使い。 そう母上から教えられていた。