くれなゐの宮


結局イハルは大層その面を気に入ったらしく、譲ってやった。

ナズには悪いが、きっと彼の事だ。許してくれる。


「…ありがとう、チサト。」


喜び、礼を言うイハルを見ていると…とても不思議な気持ちになる。

このまま、彼女の笑顔を消さないためにはどうすればいいのか。

――喜ぶ顔が見たい。

その時はきっと…純粋に、そう、思っていた。


だからおれはそのまま部屋を出て、宮人長の部屋へと向かった。

勿論気は乗らないし、
あの気迫には勝てる気がしない。


けれど、それでも彼女を祭に連れて行ってやりたい。



ただ、その一心で。