そんな昼頃に面を片手に紅ノ間に戻ると…やはりイハルは元気がなかった。
窓の外に広がる大通りには、彼女の気持ちとは反比例して、着々と宵祭の屋台準備が進められている。
その様子を眺め溜め息を零す彼女は、おれに気が付くなり、その時の精一杯の笑みで迎えてくれた。
彼女は真っ先にナズから貰った面に気が付くと「見せてくれ」と言って、手を伸ばす。
「仲の良い宮人から貰ったんです。手作りなんだとか。」
「ほう、見事だ。」
彼女が見事と言うだけあって、その面はとても綺麗に丈夫に作られていた。
イハルは面の表裏を数度見ると顔の前で重ねる。
「似合うか?」
実際に似合っているかどうかは分からなかったが、おれにとってはその仕草が何とも頼もしく、
彼女がクスリと笑えば、自然と笑みが零れた。
「よく似合ってます。」

