驚きと共に思わず笑いが零れる。


「…も、もしも、の話です…!
実は王には昼時に一度会っていて…イハル様を妻にすると公言されたので、つい…。」


恥ずかしそうに口ごもるチサト。
なんと、余計な心配を。


「そのような事…勝手に王が言い出したことだ。どうせお前が生贄だと知って、私と王が夫婦になれば生贄は不要になる…とか言っていたのだろう?」


「…な、なんでそれを…。」


「あの王は生贄に会うたびに同じことを繰り返し言っているんだ。

仮にもし私があの王と夫婦になり、この国から神が消えたとしても…何も変わらないだろう。
この国の民は皆、神に依存しすぎている。神がいなくなれば、今度は王を神としかねない。

あの王の魂胆は…そこにあるんだ。
もしもそうなれば結局、生贄は消えないどころか…もっと惨い扱いを受けるかもしれない。」


すまないな、と皮肉な程変わらない謝罪を呟く。

チサトはとても複雑そうな表情を浮かべたが、やがてゆっくりと私の背中に腕を回した。

突然の出来事にドキリとして、少しだけ体が強張る。