くれなゐの宮


掴まれた腕をさすりながら王は睨みを利かせたが、チサトは全く動ずることなく私を抱え、宮人長の元へと運んだ。


「…遅くなってしまい、申し訳ありません。」


面を付けている彼の表情はハッキリとは分からない。

でも、心配してくれているようだ。


「ありがとう。」


小さく微笑めば、彼もまた小さく頷いた。


だが…チサトの行為が、王の怒りに触れてしまったらしい。

王は臣下の携えている剣を強引に奪うと、チサトの足元に放り投げた。


その光景にどよめく人々。


「…剣を取れ。」


王は周りの反応に全く動ずることなく、冷ややかな口調でチサトに告げる。

まさか、と皆の表情があからさまに強張った。

そして危惧すべき事態は、的中する。