会話の合間にふと顔を背ければ、チサトがこちらを見ていた。
面のせいで表情は全く分からないが…こんな男と話すくらいなら、チサトと話していたい。
息を吐き、少しだけ酒を口に含む。
が、その瞬間ぐわんと目が回った。
なんだこれは…酒?いや、違う…酒に何か入っている。
慌てて王を見れば、切れ長の瞳が何か物言いたげに三日月形に歪んで。
ニヤリと笑うその顔を見て確信した。
…何か、盛られたか…。
この男…さては杯に細工をしたな…。
ギロリと王を睨みつけ…私はチサトを呼んだ。
「悪いが、水を…できれば多めに持ってきてもらえないか…。」
彼は私の様子を見て察したのか、足早に別の宮人と共に広間から出ていく。
その姿を見届け、何度か呼吸を整えているその隙に、王は周りから見えぬよう…突然私の服の袖を強く引いた。