どうしよう。ボク以外誰もいないこの部屋から女の声が。
「あの、ちょっと聞いてもらえる?」
「うあああああああ。」
一目散に逃げた。
「だから待って。」
「ついてくるな。」
「こら、リッキー。走っちゃだめじゃない。」
「母上、これには事情がありまして。」
「言い訳しないの。」
「すいませんでした。」
近づいてくる。
女の足音が。
「おい、最近変だぞ。リッキー。」
兄さんが心配してくれている。
ボクの頬が熱くなった。
「うるさい。黙れ。クソ兄貴。」
勝手に口が動く。
この前もそうだ。


お兄さんと仲がいい人間が女に操られて
ゾンビマシンに入った。
なのにボクが操作した感じになっている。
兄さんの前で口が勝手に動き
「コイツをゾンビにしてやった。こそこそ嗅ぎ回るな。」
お兄さんはボクの顔を見て絶望していた。
おまけにボクは兄さんを殴ったり、蹴ったりしていた。
この女のせいで。

兄さんは悲しそうにボクを見つめた。
兄さんに見つめられたからボクは心臓が止まりそうだった。
実際はもうとっくに止まっているし、腐っているけど。
「リッキーってブラコンなのね。」
この女ウザい。
さっきから何だろう?
兄さんはいつのまにかどこかへ行ってしまった。
「お前のせいで兄さんがどこかへ行ったじゃないか。」
「そうだね。私のせい。」
女はどこか寂しそうだった。
「ここで私と話すとリッキーが変な子になっちゃうから
 移動しよう。あの洞窟に。」
メイドさんや執事さんまでがボクのことを鋭い視線で見てくる。
女の言う通りに洞窟へ向かった。

洞窟にはなぜかじい様がいた。
誰かと話している。
じいっと耳を傾けた。
「はい。ありがたきお言葉。必ず●●を渡します。」
肝心な所聞きそびれた。
ずっとじい様は頭を下げている。
「何様。全く。●●を渡さないとわしを逮捕するとか。」
じい様はブツブツと愚痴を言っている。
愚痴を言った後、王室の方へ歩いて行った。
「もう私の存在が奴らにバレている。」
女はボソッとつぶやいた。
「それってどういうこと?」
「リッキー、何のこと?」
「恍けないで。」
「ここで何している?弟。」
兄さんと仲がいい人間。
「関係ないし、君に。」
また口が勝手に動く。
「お前は絶対に許さねぇ。よくも妹を。」
妹っていた?
「妹、見たことがないけど。」
「何、言っている。いつも一緒にいたじゃねぇか。」
「力が弱くなっている。これじゃあ操れぬ。」