「ゾンビ王国へようこそ。」

わしはここに迷いこんだ人間ににこやかに挨拶をする。

馬鹿め。ここにくるものは何があってもゾンビになる。

いや無理矢理にもゾンビにしてやる。
わしの孫がな。

わしは王様だし、汚い仕事はしたくない。

「本当に僕のこと襲わないですか?」

襲うに決まっているじゃん。馬鹿だな。こいつ。

「襲わない。」

「良かったです。」

もうじき君の笑顔はなくなるのに。

「君に紹介する。わしの孫の強だ。レノン、挨拶しなさい。」

「よろしく。オレはレノン。お前は?」

「僕は真治です。よろしくお願いします。」

そう言った真治という人間はレノンに握手を求めた。

レノンはどうやら焦っている。

そう。わしらゾンビは臭い。死人だから。

「あのさ、ゾンビじゃん。オレ。臭いと思うと思うんだ。握手すると。」

「臭くないと思います。僕が証明して見せます。」
人間は普通に孫のレノンと握手した。

見る見るうちに人間の顔色が青くなっていた。

おまけに左で鼻をつまんでいる。

「思っていた以上に臭いです。」

「だよな。オレ、ゾンビだし。」

「僕の親戚よりマシだから気にしないでください。」

「お前の親戚、ゾンビより臭いのかよ。」

「臭いです。」

わしらよりも臭いのがいるとは。
良かった。

「そろそろ仕事に戻らないとな。」

わしはレノンにアイコンタクトをしたがレノンと目が合わない。
聞こえていなかったからだ。きっと。

「そろそろ仕事に戻らないとな。」

やっぱり目が合わない。

「そろそろ仕事に戻ろかな。」

目が合わない。
合わないのではなくて避けている。

「いい加減早く戻れよ。じじい。」

レノンからそんなことを言われるなんて。
昔は優しい子だったのに。

「王様を泣かしては駄目だ。」

「だってな、こいつはお前のことを殺せって合図したのに
 なんで庇う。」

レノンは睨みながらわしのことを指をさして言い放った。

「本当なのですか?王様。」

「そうだ。」

「僕を殺そうなんて百年早いですよ。
 あの偉大な魔王を倒し、ある小さな惑星を侵略し、
 偉大な閻魔大王からスカウトされた僕ですよ。
 あんたらゾンビに負けるわけない。」

つづく。