私と彼と――恋愛小説。

「カヲルの代理人…佐久間涼さんね」


恭子の問いかけに佐久間が微笑む。何故だか佐久間は私を見て笑った。恭子も杏奈も不思議そうにその光景を見ている。


「代理人ですが――僕がカヲルですよ」


「ちょっ…佐久――」


「えっ?佐久間さんがカヲル?」


杏奈も驚いてはいるが怪訝な表情を浮かべて黙っている。普段、私達の前では見せない顔だった。自分が担当する話なのだから無理もない。


恭子はやはり仕事モードの表情になっている。スイッチが入った時の厳しい目線だ。


「ちょっと待ってくださいよ。順番にお話ししますから、まだ僕なにも飲んでないですしね」


上手いかわし方だ。そんな事を言いながら嫌味なく微笑む。恭子もテーブルを見て落ち着きを取り戻した。


「せっかくですからシャンパンでも飲みましょうよ。こんな美人さんに囲まれてるんだから奢りますよ」


現れた店員にリストを指差してオーダーする。私達にリストを見せないのは、気を遣わせない為だろう。


アピールしたい男は、これ見よがしに価格を見せる。そこそこオンナを続けていれば、そうした事も見ているものだ。