椅子から立ち上がりUSBをデスクのPCに差し込もうとする真田常務に声が掛かる。


「あー狡いですよ。常務、こっちにも見せてくださいよ!」


温厚な筈の文芸部のチーフが叫んだ。普段なら常務に大声を出すなど考えられない。


真田常務も不愉快な表情どころか楽しそうだった。


「それもそうだな、誰かコピー頼む!出来次第でスケジュール変わるだろう。佐久間さん、今日は時間大丈夫か?」


「ええ、せっかく皆さんのって来たのに時間なんて調整しますよ」


「わかった。三十分くれないかざっと目を通す」


文芸部の連中も頷いた。熱気が伝わる、全員が活きいきとしている。こうして何時も佐久間はモノを創り上げているのだろう。


すかさず佐久間は携帯を取り出して立ち上がりドアに向かって歩き出した。


輪の中に入りきれずドアの横で立ち竦んでいた私に佐久間がすれ違いざま笑いかけた。