「サイトの社長からお礼の電話があったよ。代理人だって言って佐久間が乗り込んだらしい。コミカライズも映像化も小説化も佐久間がプロデュースするんだそうだ」


「無茶苦茶な人ですね…」


「だね…何せ映像化ん時のスポンサーリストまで持ち込んだらしいからね。相当に根回ししてるよ」


呆れた表情で編集長が呟いた。頼んだ珈琲にすら二人とも手をつけていない。


「編集長…手に負える気がしないんですけど。私…」


「私もだよ。まあnoxにとっては良い事だらけなんだけどね、これから大変だよ…何せ本人とコンタクト取れてるのあんたとあたしだけだから」


「佐伯どころか、うちの出版も黙ってないでしょうね」


「そう云う事…彼奴らの事だから私には直接言い難いだろう。上から圧力かけられそうだわよ」


案の定、谷女史が役員から呼びつけられたのはその日の午後だった。