雑誌は兎も角小説の売上げは頭打ちで、余程の人気作家でもなければ会社にも作家にも利益にならない。


それは当然の流れなのだと思ってしまう。電車に乗れば誰もが携帯やスマホの画面に夢中で、文庫本を手にするのは少数派でしかない。


文芸部門の縮小を掲げた会社の方針に、彼女は文芸畑から追い出され新雑誌の立ち上げに回された。


その文芸畑で育った彼女が携帯の小説を“馬鹿にしたものじゃないから”と言うのだ。


小説を雑誌に反映させたい気持ちはわかる気がしたが、まさか携帯の小説を持ち出すとは思わなかった。


私だって編集の端くれで、膨大な人々が素人作品を掲載するサイトの存在は知っている。


もしかしたら…そんな気持ちで上位の作品に目を通した事もあった。


けれども自ずと見る目は厳しくなる。隙間の空いた行間や稚拙な文章に耐えれない。


心の何処かに、活字の方が上だと考えている私が居たのかも知れない…