私と彼と――恋愛小説。

佐久間が私の言葉に静かに立ち止まる。


「一つだけ――嫌いだった事が好きになり始めたんだ。笑わないで聞いてくれる?」


「笑わないわよ…きっと」


私は左手を真っ直ぐに伸ばし、天井の照明に指輪を翳す。キラキラとリングに刻まれた細かな細工が照明を反射させた。


「小説を――今度は“僕”が書きたいんだ」


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『なあ高邑、もしもだが――』


贖罪じゃないぞ…真田常務はそんな風に前置きをして静かに告げた。


『彼が又、小説を書きたいと言ったら俺が担当すると伝えてくれないか』


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「へー厳しいわよ…小説家の道」


「そうだねぇ。実は良く知ってるんだ」


「仕方ないわね。ちょうど私も頼まれてるんだ…伝説の編集者からね」


愉快だと云った感じで、両手を重ね背伸びをする様に真っ直ぐ上に突き上げた。


穏やかな表情を日に焼けた顔に浮かべて…