私と彼と――恋愛小説。

お陰で…周りには立ち止まる人が増え、私は顔から火が出そうなぐらいに真っ赤だった。


それでも佐久間は愉しむ様に老人に会釈を返し――空港の床に膝をついた。


「愛してる。結婚してくれないかな?」


私は泣き出しそうで…恥ずかしがる余裕すらない。


「狡いわよ…断れるわけないじゃない」


精一杯の強がりな言葉を吐き出しながら、彼に向かって頷いた。佐久間の指が薬指にリングを滑らせる…


囃し立てる周りの人々の声が聞こえる。老婦人が私に抱きついて“Congratulations!”と囁いた。


投げキスをしながら、ウィンクをしながら小さく手を振りながら彼らは立ち去る。


「恥ずかし過ぎる…」


「そうだねぇ。でも…ありがとうね」


佐久間は肩からバッグを下ろし、封筒を取り出した。


「良かった。使わなくて済んだよ…」


そう言いながら飛行機のチケットを二つに破る。


「勿体無い…」


「良いんだよ。これで…さてと行こうか?」