私と彼と――恋愛小説。

「ねえ。加奈子ちゃん――一緒に暮らさない?」


このオトコには敵わない。なんの気負いも無くサラリとそう言った。


どれだけ誤魔化そうと、空港へ迎えに来ると決めた時点で私の気持ちは決まっていたのだろう。


目の前で佐久間が細いチェーンのネックレスを外し、二つのリングの片方を自分の薬指にはめた。


それからゆっくりと私の左手を持ち上げる。そんな光景に気付いた外国人の旅行者の一団が足を止めて私達を見ている。


佐久間も気付いている筈だ…けれども照れる様子もない。


「Hey!」


一団の中に居た恰幅の良い老人が、老婦人の手を引いて私達の近くへ歩み寄る。


突然の出来事に佐久間も私も彼らを見つめた侭で佇んでいた。


彼は茶目っ気たっぷりに笑いかけ、老婦人の左手をとって跪く。そうしてゆっくりと顔を上げ――愛してると囁く。


どうだい?こんな風にするものだよ。そう告るみたいに老人は愉快そうにもう一度笑った。