私と彼と――恋愛小説。

佐久間が戻ってくる。


『加奈子ちゃん。僕と一緒に世界中を旅してくれないかな?』


真剣な眼差しと目の前に差し出された指輪。正直、ぐらつかない筈はなかった。


私は少しだけ考え込んでから彼に告げた。


『――一年だけ待っててあげる。その時に、貴方の気が変わらなければもう一度プロポーズしてみて。その時に考える』


毎日のブログで、佐久間を遠くには感じていなかった。それでも姿が見られない時間は切ないものだ。


帰国に合わせ有給休暇を取り、万全の準備で迎える自分がいる。


以前ならそんな自分を何処か卑下していたかも知れない。


彼と再会してどのような感情が湧き上がるのか?受け容れるのか、それとも…


それも別に構わないのだと思う。今の私が彼に会いたいと感じている…それで良い。


肌を切るみたいに冷たい外気など、まるで別の世界の出来事の様に広い空港の中は穏やかに暖かかった。


午後着のマレーシア航空は、若干の遅れを表示している。最後は南国なんだ…などと凡そ照りつける太陽に似合わない以前の佐久間の印象を重ねて独りで小さく笑う。


入国のゲートを眺めながら、どう声を掛けようか?そんな事を考える時間も愉快だった。