私と彼と――恋愛小説。

『ホントにさ、仕事も出来るし良いオトコの癖に…なーんかチマチマ纏まろうとしてんだから頭にきちゃってさ…』


恭子らしい言い方だったけれど、彼女が文句を付けるのは余程気に入った相手だけだ。


いつの間にか、ジュンさんと恭子はすっかりと出来上がっていた。


「そうか…それは良かった。振り返る事は大事だが――前を向く事はもっと大切だからな」


新庄監督は笑うどころか、嬉しそうに頷いていた。


「そっか。結局、誰かさん以外はケジメを付けて歩き出したわけね」


「そうですね…じゃあ、私はそろそろ…」


「ありがとうね、加奈子さん。来てくれて嬉しかったわ」


「いえ、私こそ中々伺えなくて申し訳なかったです」


少し大きくなったお腹に、愛おしそうに手をやるエリナさん。化粧っ気もない素顔には、以前よりも遥かに素敵な笑みが浮かんでいた。