私と彼と――恋愛小説。

「まあ、そんなトコですね」


カヲルの代役を下りた後、佐久間に薫さんの写真を初めて見せて貰った時の事を思い出す。


それは私にとって勇気のいる事だった。もしも、佐久間が私に彼女の面影を重ねていたならば…いたたまれない気分になっただろう。


けれどそこには、まるで私とタイプの違う女性が居た。愛嬌たっぷりの笑顔を浮かべる彼女には、佐久間が私に求めた〈カヲル〉の印象もない。


『どんな人だったの?』


『明るくて、サバサバしてた。あのさ、最初に僕の部屋へ来た日覚えてる?』


『ええ、ジュンさんが居て…もしかしてって疑った』


『スーツをさ、雑に置いてジュンちゃんが怒ったの覚えてない?』


『覚えてるわよ?』


『あんな感じで…僕もジュンちゃんも年中怒られてた』


思い出しながら佐久間は懐かしそうに微笑んでいた。


『姉さんは、ジュンちゃんの秘書だったんだ。仕事が出来る癖に他の事は雑すぎるってぶつぶつ言ってたなぁ』


想像とは違う女性に…少しだけ安堵した。


『ねえ。それじゃ…どうして私だったの?薫さんにも似ていないわ』


佐久間は申し訳無さそうに言った。


『まあなんて言うか…しっくりきた。あゝカヲルがこんな人なら良いなって。本当にそれだけだよ』