私と彼と――恋愛小説。

「世間に出てこない奴を引きこもりって言うんだよ。馬鹿な奴だなぁ」


新庄監督は、隣に座るエリナさんと一緒に呆れた風に笑った。


「それで?そのお馬鹿さんは加奈子さんを独りにした侭で、何処をほっつき歩いてるの?」


「あー今はイタリアから南仏辺りを車でうろうろしてるみたいですね」


「あいつ…帰って来るのか?」


「さあ?一通り世界を見てくるって…」


新庄監督とエリナさんは、心配そうに私を見る。


「ねえ、加奈子さん。聞いても良いかな…どうして涼ちゃんと一緒に行かなかったの?」


イブの夜――佐久間はリングを渡しプロポーズの言葉を口にした。


私は、ゆっくりと首を横に振った。


「そうですねぇ…悔しかったからですかね?」


エリナさんは愉快そうに頷いた。


〈もしも私が自由なら…想いの侭に世界を見てみたい〉


カヲルの最期の言葉。第六話の終わりは、そんな風に綴られていたのだ。


「居ない人には勝てないものねぇ…」


エリナさんが呟いた。