私と彼と――恋愛小説。

型通りの新年の挨拶を終える。真田常務は機嫌が良さそうだった。


カヲルの小説はベストセラーとはいかない迄も、随分と反響をもたらした。


正月の大作映画が公開を終える頃、カヲルの映画は全国で上映が始まる。まだいけそうだと踏んでいるのだろう。


「真田さん。お忙しいとは思いますが、最終掲載分の第六話です」


真田常務のデスク脇には“年始のご挨拶”と印刷された真新しい名刺が置いてある。


常務も直ぐに外出する様子で、スーツにコートを羽織った侭の格好だった。


後で――


多分、後で見ると言いかけてパラパラと印刷された紙を捲り私達に目を向ける。


「真田だ。悪いが年始回り先に行ってくれ、後で適当に合流する」