私と彼と――恋愛小説。

一週間程が過ぎた夜ーー私は、佐久間の車の助手席に居た。


両脇の街路樹は、随分前からイルミネーションで飾られている。車窓を通して目に入るカップルが普段より幸せそうに見えるのは、きっと私の気のせいではなく…今夜がクリスマスイブだからだろう。


「どうしてもーーかな?」


「ごめんなさい……」


「そうか…」


道の脇に停めた車のフロントグラスへ顔を向けた侭で、佐久間は小さく息を吐き出していた。


佐久間は行き場を無くした小箱を――名残惜しそうにポケットへ仕舞った。


「じゃあ――元気でね。加奈子ちゃん」


私の決断を覆しそうな寂しい笑顔はずっと忘れる事はないだろう。