私と彼と――恋愛小説。

愉しそうな会話をしていても、心は落ち着かない侭だ。



あの夜聞かされた事が頭に浮かぶ――



『姉さんが居たんだ――』


“居た…”家族はもう居ないと言った佐久間の言葉。


私は、ただ黙って聞く事しか出来なかった。


『六つ歳上で…まあね、両親の事もあったから仲が良かったなぁ』


『そう…』


無理に微笑む私に――佐久間も同じ様に笑い掛けた。


『ふぅ…ねえ加奈子ちゃん』


『…なに?』


『読んでくれるかな?カヲルの最期の小説…』


『良いの?』