私と彼と――恋愛小説。

「まあ、良いか…新庄には黙っておいてね」


エリナさんが悪戯っぽく笑う。その後で佐久間にも視線を投げる。


「実はねぇ、小説の内容とか冬馬と新庄との事とか――それだけじゃないんだ…あの時、急に結婚を決めた理由」


「あの…それが私に何か関係するんですか?」


「うん…あのね、加奈子さん。新庄がこれまで結婚した相手って何してる連中か知ってる?」


「あー確か、全員女優だったね。そう云えばさ」


エリナさんは、まだ真っ直ぐに私を見ている。佐久間は何故だか可笑しそうに頷いていた。


「なる程ねぇ…天下のエリナがね」


佐久間がそう言うとエリナさんも笑いだした。


「えっと…私だけわかってないみたいなんですけど?」


「そう…じゃあ、言わないでおこうかな?悔しいから」


「悔しいって…なんですか?」