「だってさ…行こうか?涼ちゃん、加奈子さん」


「はい…お邪魔そうですからね」


あの夜…佐久間の告白を聞いた日から、私はカヲルの代役はしなくなった。


最初に真実を告げたのはエリナさんと新庄監督にだ。


『そうか…まあ、良いんじゃないか?どうせ俺がするのは映画を撮る事だけだしな。世の中なんてもんは虚構の塊だ―事実や真実なんて何処にも意味はない。伝えたい事が届けば――それで充分だ』


エリナさんも気にしない様子で監督の横で笑うだけだった。


「全くねぇ…芸術家ってのは扱いが大変よ。加奈子さんもそうじゃない?似たような偏屈オトコだし」


「酷いなぁ。僕は監督ほど偏屈じゃないよ」


「どうだかね」


「まあしかし驚いたよ。まさかこのタイミングであんな事になるなんて」


映画のクランクアップ寸前だった。冬馬とエリナさんの事がマスコミにすっぱ抜かれたのだ。


エリナさんと監督が入籍している事は映画の公開に合わせようと路線変更されていた。