ポツリとそう言った後…「いただきます。美味しそうだ」直ぐに手を合わせて味噌汁に手を伸ばした。


「そうなの?彼女みたいな人が作ってくれたり…実家でだって食べられるじゃない」


美味しそうに食べ始めた佐久間の箸が止まった。


「家族は…もう居ないんだ…」


「えっ?あっ――ごめんなさい」


「食べてからにしようよ。冷めたら美味しくないよ」


ぎこちない笑顔だと思った。それでも美味しいとの言葉を何度も言い、佐久間は食事を続けた。


先程の事など無かった風に、佐久間は食事を平らげて満足そうな表情を浮かべる。


「あー美味しかった。ご馳走さまでした」


「そう、良かった。今、珈琲淹れるわね…」


立ち上がる私の腕を柔らかく掴み佐久間はゆっくりと言う。


「そんな顔しないでよ。大した話じゃないからさ」


「話さなくていいわよ?」


「いいよ、別に秘密にしてるわけじゃないから」