私と彼と――恋愛小説。

「そう…じゃあ、良い方だけ受けとっておくかな」


「狡いですねぇ」


「まあね、人生何があるかわかんないからね。後悔するのはごめんだよ」


一瞬…目を伏せて呟く。けれど上げた顔は満面の笑みを浮かべていた。


「そういえば…サイトの方は今週が最終回ですね…」


佐久間が書いていた小説。毎週水曜日、午前零時…


初めて会った時、佐久間は作品に思い入れはないと言い切った。小説にすら興味がないとも。


本当にそうなのだろうか?少なくとも二年間、毎週欠かさずに更新を続けていたのだ。


例えば小説が趣味であるとか、もしくは仕事であるならば不思議ではない。


しかも、同時に書籍とする事を見越して作品を書き上げている。


何が佐久間を支えていたのだろうか?聞かないと決めていた事を追及しそうになる。


「そうだね…流石に長かったなぁ。二年間だもんな」


「寂しくないですか?」