私と彼と――恋愛小説。

「こんにちは」


編集部のドアが開き、通る声が聞こえてくる。


「加奈子。佐久間さんと約束してたのか?」


「いえ、そんな予定はないですけど…」


谷女史が立ち上がり佐久間の元へ歩き出した。


「こんにちは、どうされました?」


「移動でnoxの告知見たんで…これ、陣中見舞いです」


手に持ったケーキの箱を持ち上げて、佐久間が笑う。


「わざわざありがとうございます。他は順調ですか?」


編集長は、チラリと私を見て佐久間に告げた。


「そうですね、彼女の小説も予定通り来月半ばに出版出来るそうです。問題なしですかね」


「そうですか。カヲルのページ、ゲラ上がってますけどご覧になりますか?」


「ああ、それは是非。画面とは随分イメージ変わりますからね」