私と彼と――恋愛小説。

「見ました!加奈子さん!凄いですよね」


編集部は告知の話題で持ちきりだった。事前に聞いてはいたものの、実際に目にするのとは大違いだ。


谷女史だけが冷静に見える。私も同じだ、無邪気に騒ぐわけには行かない。


その分責任がのしかかる。


「どうだ、谷ちゃん。中々派手に仕上がったろ?」


宣伝の部長が愉快そうに笑いながら現れる。


「ありがとね。その分胃が痛いわよ」


「うちとしても異例の予算だからな。外すわけにゃいかんよなぁ」


「なによ、わざわざプレッシャー掛けにきたの?」


「当たり前だ。まあ、頑張ってくれよな」


昼過ぎには真田常務まで現れる。普段は滅多に顔を出さない常務に、部員達は緊張している。


谷女史と雑談を交わし、私にも声が掛かる。


「ようっ!高邑。期待してるからな」


「はい。朝からプレッシャーかけられっぱなしですよ」