私と彼と――恋愛小説。

「優子…顔ごとハートマークになってるな。どうする?副編集長。あんたはアレだろ?」


アレ…そうだ。私はカヲルとして彼等に会う事になっている。


「じゃあ取材OKなら優子に頼むわよ。但しライターは恭子だからね」


「…恭子さんですか」


「何よ、不満なの?いい機会だわ。鍛えられてきなさい、優子があの子以上に書けるなら別だけどね」


編集長の言葉に、優子は黙って頷いた。若い子に恭子は厳しいのだ。いや、仕事が出来ない相手に厳しいと云うのが正確だろう。


「お手柔らかにって言っとくわよ」


優子に耳打ちすると、すがる様にぎこちなく笑った。


「何よ、そんなに怖いの?恭子の事」


「笑顔で…バッサリダメ出しするんです…」


「そうなんだ、知らなかった」


「前にフォローのつもりでタレントに質問して…そうしたら何だか変な感じになっちゃって」


「それで?」


「流れが台無しねぇ、向いてないんじゃない?って…満面の笑みで」


「良いじゃない。怒られなかったんでしょ?」


「怒られるより怖いですよ…」