私と彼と――恋愛小説。

「そうよね。まあ、頑張ろうよ」


「良いなぁ、加奈子さん。佐久間さんとは仕事出来るし、カヲルの担当もあるし」


少し不満そうに呟く彼女に返す言葉がない。肩をぽんと叩いてデスクへ戻る。


昨夜の事が不謹慎にも思えてしまう。個人的な事だとは云え反感を買うのは間違いないだろう。


携帯が震える。佐久間から短いメッセージだった。


〈眠いねぇ…〉


思わず笑いそうになり、周りを見渡す。不謹慎だろうが嬉しい事に変わりない。



〈そうですねぇ…〉


わざと素っ気ないメッセージを返した。


〈キャスト確定したよ。PCへ詳細送ったからね〉


慌ててメールを確認する。こちらには丁寧なビジネスメールの文面で書かれていた。


「編集長!映画のキャスト確定らしいです!」


谷女史に声を掛けると、優子達も興味津々に画面を覗き出した。


「へぇ…凄いね。エリナが主役で、冬馬に椎奈か。全員、旬の役者じゃない」


「加奈子さん!佐久間さん諦めますから、冬馬の取材したいです!」