私と彼と――恋愛小説。

「上がろうよ…」


そう囁くと思いがけない力で佐久間が私を抱える。お姫様だっこなんていつされただろう。


「ねえ、嬉しいけどヒールがね…」


「あー台無しだね…」


二人で靴を脱ぎ部屋に上がる。


「やり直し…」


わざとらしく佐久間の前で両手を広げてみる。可笑しそうに笑いながら私を抱きあげる。


「重くない?」


「さあ…どうかな?明日立ち上がれないかも」


軽々と私をベッドへと運ぶ。


「細いのに…力持ちだね」


「無理してるだけ…」


佐久間の指が私の髪をかき上げ、今度はゆっくりと唇が触れる。