私と彼と――恋愛小説。

佐久間は無言で助手席のドアを開けた。私の顔を見ないのは照れているからだろう。


「参ったな…勢いで来ちゃったけど、朝から仕事だよね?…」


「まあ、そうですけど。電話をしたのは私の方ですから」


ゆっくりと車を走らせながら佐久間が呟く。


「嬉しかったんだ。妙にさ…更新のボタン押したら着信があって」


「狙ってましたもの、絶対に携帯見てる筈だって」


「ああ、そういう事か。なる程ね…でも、急にどうして?」


「さあ…何故でしょうね。この間、不覚にも寝ちゃったからちゃんと謝ろうって思ったからかな?」


「そんな理由?」


「そんな理由…に格好付けて電話をしようとしたのは本当ですけどね。きっと声が聞きたかっただけです…」


「んっ…凄く幸せな気分だ」