私と彼と――恋愛小説。

少しムッとした表情で佐久間が私を見る。どこ迄が本気なのだろう。


何故だか昨日読み耽った小説が浮かぶ。聞いて見るなら今しかない気がした。


「聞いても良いですか?」


「ん?難しい顔だね…」


「あの小説…どんな秘密があるんですか」


佐久間はハンドルを握ったまま、暫く口を開かない。答えに悩んでいる風ではない。


まるで無表情にすら見える。ゆっくりと車が道の端に寄せられた。


「秘密か…」


そんな風に呟いて溜め息をついた。ゆっくりとこちらを向いて寂しそうに微笑む。


「もしかしてさ…あの小説と僕の事を重ねたりしてる?」


どきりとする。誤魔化しても仕方がない。


「何となくですけど…」


クスっと彼は笑う。


「若い才能のある陶芸家…残念だけど僕じゃない。別に誰かと女の子を取り合ったわけでもないしね。ただの物語だよ――カヲルが書いた」