私と彼と――恋愛小説。

「まあ、才能はある。人間的な魅力もある。惚れるだろ?」


「さあ…それはどうでしょう」


「そうか、良い答えだ。奴にまだ惚れてないなら俺にもチャンスはあるな」


「また、冗談ばっかり仰って…」


「そう?案外、本気で誘ってるんだけどねぇ。因みに五十前の男は範疇じゃないか?」


真顔で初対面の男に口説かれる。半ば冗談だとしても気分は悪くない。


「あーもう!監督!本気で口説いちゃったりしてないでしょうね」


「何だよ。気が利かない男だなぁ…もう少し時間を寄越せよな」


「本当にこの人だけはもう…気に入ると片っ端からこんな風だもんなぁ」


「馬鹿言え、俺はいつでも本気だよ。恋愛しないで人生何が愉しいんだよ。お前さんに欠けてるのはその辺だぞ」


「どう思う?こうやって、すぐ人の事からかうんだよね。三度も結婚してるんだから、いい加減懲りれば良いと思わない?」


「懲りる?良いか、人生はな何度でもやりなおせるんだよ」