私と彼と――恋愛小説。

「そうでしたっけ」


「これだよ。怒りもせずこいつ独りだけ笑顔で言うんだなぁ…まあね、こっちもCMなんて片手間だって舐めてたとこもあったしな。見た目もこんな風だろ?若い癖に更に若く見える」


監督は頭をかきながら苦笑している。


「おかげさまで良い作品になりましたね」


「苦労したけどさ。まあ、結果オーライってやつだな」


「あー申し訳ない。少し席を外します」


佐久間が携帯を眺めそう告げた。


「戻らなくて良いぞー。俺はお嬢さんを口説いてるからな」


手を上げて佐久間を追い払うみたいに戯けて見せる。随分仲が良さそうだ。


佐久間が部屋を出る、作品の事を聞かれるかと思うと焦ってしまう。けれど監督が口にしたのは別の事だった。


「変わった男だろ?」