私と彼と――恋愛小説。

「まあ、後は脚本次第だな。俺の方は出来るだけ原作のイメージ残して撮るつもりだがね」


「期待してますよ。新庄監督」


「また、簡単に言うね。なんせ、劇的な物語じゃないだけに難しいんだぞ」


「大丈夫ですよ、監督の感性は知ってますから」


佐久間が笑いながらそう告げる。


「知ってるか?お嬢さん。こんな風に笑いながらダメ出しするんだぞ、この男。妥協も何もあったもんじゃないね」


「そうなんですね…」


「この温厚な俺が切れそうだったもんなぁ…最初に組んだ時」


「あー…ピリピリの現場でしたねぇ」


「そう、役者もスタッフも黙り込んでる中で一言だ…こいつが“イメージと違います”しれっと言うんだよな」