私と彼と――恋愛小説。

「よう、涼。CMだけじゃ飽き足らず映画にまで進出かよ。仕事だけはアクティブだな」


新庄監督は、邦画では第一人者だ。派手な演出はないけれど質の高い作品は私も好んで観ている。


「仕事だけ…は無いでしょう。この人が映画の監督。以前にCMを何本かお願いした事があるんだよ」


「よろしくお願いします。私も何本か拝見させていただいています」


「嬉しいねーどうしても原作者には会っておきたくてね。良いじゃん、涼。いっそ彼女の主演でどうなんだ?」


「彼女がOKすれば構いませんよ。口説いてくださいよ監督」


「勘弁してください…冗談でも困ります」


「そう…なあ、佐久間くん。ちょい役ぐらいなら駄目かな?謎の作者が実は出演してるなんて面白くないか?」


佐久間は可笑しそうに私を見る。


「説得してみますよ。どうする?カヲルさん」


「ご冗談を…謎のままで良いです…」