私と彼と――恋愛小説。

「敵…ですか?」


「敵ってのは大袈裟だけど、嫌われてる事も多いからね。何処で足元すくわれるかわかんない」


苦笑して話すけれど、多分本当の事なのだろう。


「わかりました、断っておきます」


「ごめんね。聞いてあげたいんだけど」


「いえ、大丈夫です」


「ねえ、この後は仕事に戻るの?出来れば――僕からもお願いがあるんだけど」


「えっと…今日はオフにしてもらいました。このところ休んでなかったので、でもお願いって…」


「んーあのさ。嫌なら断ってくれて良いんだけど…その、デートしない?」


ハンドルを握り、前を見つめた侭で佐久間が言う。何故だろう照れている様な表情にも見える。


この男が女を遊びに誘うのに照れる?それがあまりに可笑しくて笑いが堪えられなかった。


クスクスと肩を揺する私を佐久間が肘で突つく。


「笑うとこかなーそこ」


「だって何だか…デートって言葉が久しぶりですもの」