私と彼と――恋愛小説。

ジュンさんがぽんと肩を叩く。


「さて、後は着替えて行ってらっしゃい」


「今日はジュンさん来ないんですか?」


「うん、監督さんに会っても仕方ないもの。あたしも結構忙しいのよね」


「そうですよね…」


「何よ、涼ちゃんと二人だと居心地悪いの?」


「そんなわけじゃないんですけど…」


「そうよね。加奈子ちゃんにしてみれば、振り回されてるだけだもんねぇ」


「まあ、その辺は諦めましたけど」


自分でも、佐久間と二人になる事がどうして気が重いのかがわからない。


「どう、準備出来た?」


佐久間のオフィスにあるミーティングルーム。様子を確認するようにドアの外から声が掛かる。


「じゃあ、着替えたら出ておいでね」