私と彼と――恋愛小説。

メイクの筆を走らせるジュンさんと、佐伯に見せられた大友の姿。


どうしても同じ人物だと思えない。ギャップと云うには激し過ぎた。自然と私の視線は鏡の中のジュンさんに向かってしまう。


「そんなに見つめないでよ。照れちゃうでしょ」


ジュンさんは少し困った顔をして苦笑いするのだ。


「ごめんなさい…」


「あー…その謝り方。調べちゃったのね昔の事…」


「えっと…」


「まあ、仕方ないわよね。取材するのが加奈子ちゃんのお仕事だし」


「すいません。そんなつもりじゃなかったんですけど…」


「いいわよ、所詮昔の事だし。でも――質問には答えないわよ」


また先を越された…確かに私にがジュンさんのプライベートに踏み込む権利は無い。


「はい、質問はしません」


「ありがとう。きっとね…そのうち話せると思うわ。だから其れ迄待って」


「何だか意味深なセリフですね…」


「あははっ、そうね。人生色々あるものよ、加奈子ちゃんとの縁だって相当なもんよね」