私と彼と――恋愛小説。

私とでは続けてゆけないと云う事なのだろうか。悔しいけれど彼の小説は新雑誌の目玉でもある。


イメージが違うとは云え、編集者として逃げられるわけにはゆかない。彼が作品を公開しているサイトで告知を行うだけでもどれだけの宣伝効果があるか…


私は姿勢をただして佐久間に告げる。


「私の事がお気に召さなければ新しい担当者を付けます。お願いします、うちの雑誌に書いて下さい」


プライドなどどうでも良い、私の仕事は彼に書いて貰う事なのだ。


「ヤダね。加奈子ちゃんが担当じゃなきゃ書かないよ。と云う事でさ…編集長さん呼び出してくれないかなぁ」


「編集長…ですか？」


「そう、大事なお願いしないとね。但し編集部には行きたくないからさ、今日の夜にでも会おうよ。場所は後でメールするからね」


それだけ言い放って彼は席を立つ。すぐに携帯で何処かへ連絡をし始めた彼に言葉を掛ける暇もなかった。