私と彼と――恋愛小説。

「良いんです。もう乗りかかった舟ですから…そんなに謝らないでください」


「そうか…謝ってばかりだったかも」


佐久間が苦笑いしながら視線を反らせる。


「佐久間さん…何か隠してる事ないですか?」


「僕が加奈子ちゃんに隠し事か……」


「そうです。私にかも知れないし…もっと色々な人にかも知れないですけど…」


じっと佐久間が私を見つめる。思わず目を逸らしたくなる程真っ直ぐな視線だった。


「隠し事か…秘密めいた言葉だね」


「誤魔化してます?」


「そうかも知れないな。ただ…今はまだ話せない」


「今は…ですか」


「そう、今はまだ話せない。けどね…心配する様な事じゃないから」


静かな微笑みは、それ以上私に追求させる事を拒んでいる風に見えた。