私と彼と――恋愛小説。

「よお、高邑。nox絶好調だぞ」


この間の一件で私の名前まで社内で有名になっていた。営業の部長が笑いながら私の名前を呼ぶ。


「広告ですか?順調だと思って良さそうな感じです?」


「ああ、本当に絶好調だよ。カヲルがサイトでnoxの名前出してくれてるのが大きいな。うちの上にも評判良いんだ」


「上って…上ですか?」


思わず天井を指差した。この上は社のお偉いさん方のフロアだった。


「そうだよ上だよ」


部長は愉快そうに私の真似をして天井を指差した。


「元々うちは小説から始まった出版社だからな。雑誌やらは売れても連中のウケが悪いんだ。で、今回は携帯とは云え小説が目玉の一つだからな」


「それで皆様がた機嫌が宜しいと…」


「そうだよ、しかも創刊の雑誌なんて様子見の出稿が殆どなのにあっと言う間に埋まっちまった。宣伝費増額しろとよ、このけち臭い会社がだぞ」


「そうですか…」


「何だよー、もっと嬉しそうな顔しろよな。頼んだぞ、絶対に失敗出来んからな」


部屋を出てため息が出た。創刊号にはカヲルのインタビュー記事が載る。写真は私だとバレない様に慎重に選んだ。


いずれ全てが明らかになった時…笑い事で済まされるのだろうか…