私と彼と――恋愛小説。

佐久間の態度が妙に思えた。唐突に恭子の言葉を思い出す。


『執着している』


確かに私の顔色を伺う様に感じてしまう。佐久間にしてみれば私の存在などカヲルのダミーでしかない筈なのだ。


「いえ、大した事じゃないです。少しだけ仕事の事で…まあ、色々と」


「そう…なら良いんだけどさ。打合せちゃおうか?」


佐久間に進行の予定を渡す。佐伯の資料ももちろん一緒だった。


佐久間は渡された資料に一通り目を通しながら時折目を瞑り小さく頷く素振りを見せる。


「うん、これで大丈夫だよ。コミックだけは待てるかな?明日か明後日には映画の主役が決まるからイメージを合わせたいんだ」


「わかりました。そう伝えます…」


「後は…来週から数社のスポンサー廻りするけどね…大丈夫かな?」


「大丈夫です。カヲルを最優先にしろと言われてますから」


きちんと微笑んだつもりだったけれど、佐久間は私を見つめて小さくため息を吐いた。