私と彼と――恋愛小説。

理屈は分かっている。それでも何処か納得出来ない気持ちが残っている。


営業部に文芸部を回り、進行の要望を渡されて簡単な打合せを済ませた。とにかく佐久間に連絡を取らなければいけない。


携帯に連絡を入れるが留守電のメッセージが流れるだけだった。


バタバタとしているのだろうと思う。佐久間にすれば仕事はこの件だけではないのだ。


折り返しの連絡が来たのは会社を出る頃だった。


「申し訳ない、ちょっと出られなかった。何だったかな?」


「いえ、佐久間さんがお忙しいのは承知してますから…」


「うーん。機嫌が悪そうだね…」


駄目だ…何処か気分が切り替わらない。こんな事じゃいけない、私だってプロなのだ。


「あっ、いえそんな事ないです。うちの連中から佐久間さんに進行の要望が来てるのでどうしようかと思って…」


出来るだけ明るい声に切り替える。


「そう、なら今からなら大丈夫だけど?」