「お帰りなさい!副編、デスク確認お願いします。じゃ、行ってきます!」


編集部に入ると部員の一人が駆け出して行く。佐久間の事だけ考えているわけにはいかないのだ。


PCのモニタ周りにびっしりとメモが貼り付けられていた。ため息が出そうだ…


営業部、文芸部、コミック担当の佐伯…ちょうど戻った谷女史が私を見て笑う。


「加奈子…大人気だね」


「編集長、洒落になりませんよ。これ」


「そうだね…窓口は全部加奈子だもんなぁ」


思案する谷女史を見ていても始まらない。とにかく片っ端から電話を入れる。


文芸部からは正式な出版日程と校了迄のスケジュール、営業部からは発行部数の相談と進行打合せ依頼。


「ああ、加奈…いや、高邑さん。忙しいそうなとこ悪いが俺の方も作家押さえないと不味いんだ」


俺の方も…どうやら私の状況は把握している様子だった。


「ですよね…申し訳ないですけど、佐久間さんへ渡した資料此方へも廻してくれますか?」


「そうだな、すぐ届ける。何せ掲載誌も決めないと…」


バタバタと他の用件を片付ける。言葉通り佐伯はすぐに現れた。