私と彼と――恋愛小説。

恭子がnoxの説明をする。自分達で創ったコンセプトなのに新鮮でもある。


それと同時にありきたりなコンセプトだと感じてしまう。当然だろう…魔法の様な切り口などあり得ない。


三十代女性の本音…果たしてそんなものがあるのだろうか。


厄介な年齢だと思う。半端に世の中の仕組みを理解して、ある程度先が見えてくる。


オトコに頼るのか、自分で生きて行くのか…それ程単純な事でも無い。


「さあ、それじゃあハケて貰おうか。佐久間さん、この場所使ってて構わないですか?」


佐久間は了解を出しスタッフを撤収させた。最後に恭子に近づいて、何かを耳打ちする。


そうして二人きりで〈カヲル〉へのインタビューが始まる。


恭子にインタビューを受けた相手は、決まって最後に口にする。


喋り過ぎた…だとか、愉しかった。


誰だって初対面の相手に本音など話さない。恭子にかかると自然に本音を話し出すのがわかる。


だからこそこの世界で生き残っているのだ。